Column
人妻援護会コラム

2025

07.01

Tue

「べらぼう」の時代に生きた“江戸の性”──花街・吉原と風俗産業のリアル③
大河ドラマ『べらぼう』の時代――18世紀後半の江戸。そこには、遊廓・吉原というひとつの町があり、その中で懸命に生きた女たちと、それを取り巻く男たちがいました。
女たちはただ消費される「商品」ではなく、芸を磨き、人としての誇りを胸に抱えていたのです。
今回は、そんな江戸の風俗産業と現代との接点に焦点を当てながら、「性と社会」のあいだに流れる水脈をたどってみたいと思います。
〇江戸と現代における建前と本音の共通点
性をめぐる社会の在り方は、時代を超えて私たちの暮らしや価値観と深く結びついています。
江戸時代、吉原などの公認遊廓は幕府の許可のもと運営されており、遊女登録や営業区域などは細かく定められていました。
つまり合法でありながらも、あくまで「建前」としては“非道徳的”なものとされ、街の外に隔離されていたのです。

現代日本でも、風俗業には厳しい法規制があります。売春防止法により性交渉を伴う売春行為は違法とされつつも、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の下で、さまざまな形態の性サービスが合法的に運営されています。

つまり、どちらの時代も「性」は制度のグレーゾーンの中に置かれ、社会の建前と本音を映し出す鏡であったことがわかります。

加えて、江戸は情報の統制が厳しい時代でしたが、浮世絵や読本、春画といった形で性文化は庶民の間に深く根付いていました。
性は単なる下世話な話題ではなく、風刺・芸術・知識として昇華され、文化の一端を担っていたのです。

一方で現代は、インターネットを通じた情報の流通が極端に速く、匿名性と結びついた性情報が氾濫しています。
客層もまた多様化し、男女・年齢・経済背景を問わず「性の消費者」となる構造が可視化されています。
それでも、江戸と現代に共通するものがあります。
それは、性にまつわる偏見や分断が、いまだに社会のなかに根を張っているということです。
〇文化としての“性”
大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の主人公、蔦屋重三郎は、ただの出版業者ではありませんでした。
彼は絵師や作家と組んで、世に笑いや風刺を届け、性を語る文化”の発信者となっていきました。
彼が世に送り出した春画は、単なる官能の対象ではなく、夫婦の性教育や人生訓、さらには風刺や人情を織り込んだ読み物として広く親しまれていたのです。

江戸の風俗産業は、私たちが思い浮かべる単純な売買春とは異なり、衣装・芸事・出版・経済・都市開発……それらすべてが絡み合った総合的なビジネスと文化の交差点でした。
〇さいごに
「性」を語ることは、どこかためらいをともなう話題かもしれません。 でもそれは、私たちの暮らしや命と切り離されたものではなく、時代ごとに形を変えながらも、人の営みの中に確かに存在し続けてきたものです。

大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』のなかで蔦屋重三郎が伝えようとしたのは、「性」を人間の奥深さと複雑さを映すひとつの文化として、見つめていこうとする姿勢だったのではないでしょうか。
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